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世界の研究者と空き缶サイズの人工衛星製作へ-首都大、学生もサポート

首都大学東京の佐原宏典准教授(中央右)と研究室の学生たち

首都大学東京の佐原宏典准教授(中央右)と研究室の学生たち

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 首都大学東京日野キャンパス(日野市旭が丘)で現在、今夏に同学の学生も参加して行われる「缶サット・リーダー・トレーニング・プログラム」に向けた準備が進められている。

開発状況を話し合う学生たち

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 「缶サット」は約350ミリリットル以下の缶のサイズに収めた超小型模擬人工衛星のこと。打ち上げ時は小型モデルロケット等に搭載して上空に放出した後、ミッションを行いながらパラシュートで降下させる。手軽に開発できることから人工衛星に関わる技術を学ぶための教育ツールとしても用いられている。

 東京大学大学院工学研究科の中須賀真一教授を中心に進められている研究プロジェクト「ほどよしプロジェクト」の一環で行われる同プログラム。主催は首都大学東京とNPO法人「大学宇宙工学コンソーシアム」(文京区)。世界から物理学や宇宙工学などに携わる研究者、教育者が集まり、約1カ月にわたって開発技術などについて学ぶ。昨年2月の初開催以来、これまでにアルジェリア、インドネシア、エジプトなど16カ国から20人を超える研究者らが参加した。

 3回目となる今回は、中須賀教授とともに研究を進めていたこともあるという首都大学東京大学院システムデザイン研究科准教授の佐原宏典さんが受け入れに名乗りを上げた。佐原さんは宇宙システム工学が専門。これまで教育の一環として学生とともに「缶サット」を開発してきた。「いきなり人工衛星を扱うのはハードルが高い」と佐原さん。「『缶サット』は数カ月で作れる上、試行錯誤ができるいい教材」と話す。

 事前選抜を通ったイスラエル、トルコ、ナイジェリアなど9カ国、10人が研修員として集まり、7月中旬から同キャンパスで技術などを学んだ上で、実際に「缶サット」を作り上げていく。サポートするのは佐原さんの研究室の学生たち。「通常半年くらいかけてやるところを1カ月でやるので、今はより簡単にできるように学生が開発を進めている」と佐原さん。

 学部4年生と修士1年生を中心に10人を超える学生が参加。「学生のモチベーションは高い」と佐原さん。期間中は、失敗の経験を伝えるなど自分で考えてコミュニケーションを取っていくことを促す。「本音で話し合える間柄になれれば」。日常生活から共に行動するため、学生たちも参加者の経歴や各国の文化を自分で調べてミーティングの場で発表するなど準備を進めている。「まだ2カ月あるので、あくせくしながらも頑張りたい」「ちょっとしたことでも帰国した後に自国で生かしてくれたらうれしい」など、学生からは前向きな声が聞かれる。

 プロジェクトを通して開発した「缶サット」は、8月15日から秋田県能代市で行われる「能代宇宙イベント」の際に打ち上げる予定。各国から研修に来る人たちには技術だけでなく、「レベルが異なる人がいてもチームワークを取り、マネジメントできるスキルを身につけてほしい」と佐原さん。学生たちにも、「人がやっていることを客観的に見ることができるはずなので、その視点を培ってほしい」と期待を込める。「最後に秋田で乾杯できれば」とも。

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